ホームレスが集まる公園と常識人の集う一流ホテル… そのちょうど狭間


心の傷、罪悪感、劣等感。


トラウマだったりコンプレックスだったりするこれらのマイナス要素を味方につければ、強くなれる魔法や輝ける魔法にかかる。


とらえ方次第で最強の武器になるのだけれど、この武器はそう簡単に使いこなせない。


闇と向かい合うことはとても苦しいから。



過去は絶対に取り返せないし、犯してしまった罪をなかったことなど絶対にできない。


重い罪ほど背負っていくもの。


背負うだけなら罪はただ罪のまま在り続ける。


重要なのは、背負いながら「何を感じてどう行動するのか」である。


そう、分かっているんだけれど。


名越の目に果たして自分はどう映るのかと思うと【ホムンクルス】を読みながら気持ちが暗く沈んだ。




女子高生のくだりは冗長だし、その後も伊藤との禅問答のような会話が長く続いたりと展開はなかなかじれったい。


だが名越や伊藤やイタさんの過去、それぞれの持つ深い傷に近づいていく緊張感にはひどく動揺する。


心がざわついたままどんどん物語に引き込まれていくのだった。



たたずまいも含めて、ななみの得体の知れなさが不気味。


妖怪じみたあのテケテケ走りは何なんだ。



終盤の全部自分な世界観はもはやギャグの域。


突き詰め過ぎて滑稽なほどに狂気だし崖っぷちだし哀しいし、精神は完璧に破綻している。


なんだかよく分からないけどとんでもないものを読んだ、という後味。


いつまでも反芻してしまうんだよね、数々のエピソードを。


スルメ系漫画です。


あと単純に、山本先生の絵が好き。


キャラクターの造形的にも【殺し屋1】や【HIKARIーMAN】より好き。




【ホムンクルス】全15巻

作者/山本英夫

掲載誌/小学館・ビックコミックスピリット(2003年 - 2011年)


「これは独り言だが」

きみは何も見なかったし、何も聞かなかった。いいな?

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